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インボイス制度の侵攻

  • 2022年7月12日

最近良く見る「インボイス制度」という言葉。
なんだろう?と思っている人も多いのではないでしょうか。
今回は話題になっているインボイス制度について書いてみましょう。

ざっくりインボイス制度とは、
消費税に係る制度で、”消費税の納付に関するルールが変更”されます。
ちなみに施行は来年の2023年10月からです。
順を追って説明していきましょう。

時は遡ること1989年、この年、新たな税制”消費税”がスタートしました。
若い人はびっくりするかもしれませんが、
昔は消費税は無かったのです(苦笑)

いままで無かった消費税がスタート(このときは税率3%だったなあ)するに当たり、
取引に対する手間や消費税に対する社内の仕組みの変更など、
混乱が懸念されました。
後の消費税の税率改正(3%→5%)や、
最近の軽減税率(8% or 10%)のときの混乱を思い浮かべると
想像しやすいと思います。

そこで消費税導入時に優遇措置が取られました。
それは、「年間売上1,000万円以下の会社(個人事業主含む)は
消費税を納めなくていいよ」
というものでした。
年間売上1,000万円以上の会社は、通常通り消費税の納付義務があります。
この制度は現在も続いています。

でも実際売上1,000万円以下の会社から出てくる請求書には
「消費税〇〇円」という記載があります。
その消費税ってどこに行くの?というと、
それはそのまま請求した会社の懐に入ります。
別に悪いことではなく、そういった経済基盤の弱い
零細企業や個人事業主に対する支援の意味も有りました。
これを「益税」といいます。(らしい)

その消費税施行時から続いてきた優遇措置が、
今回のインボイス制度によって無くなります。
要は「売上規模に関わらず、もらった消費税はちゃんと納付する」
という制度になるということです。

じゃあどのように消費税の流れを把握するのかというと、
「インボイス登録」というのを行います。
登録すると”インボイス番号”というのが交付され、
それを請求書に記載することによって、
「消費税」という項目を記載することができます。
このインボイス登録が無い会社が請求書に”消費税”の項目を
記載すると罪に問われます(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)

さらに今までは消費税納付義務がある会社(年間売上1,000円以上)が消費税を納める場合、
下請けなどの外注に支払った消費税分は除外されていました。が、
今後は非インボイス業者に消費税を支払ったとしても
それは消費税を支払ったと認められなくなります。
じゃあどうなるか。この会社は外注に支払った消費税分も国に納付します。
外注に消費税を支払い、国にも消費税を支払う、
消費税の二重払いという痛い事になってしまいます。

じゃあみんなインボイス登録すればいいだけじゃん、かというと
デメリットが大きく2つあります。
一つは本名がわかってしまうこと。
インボイス公表サイトなるものがあって、
ここでインボイス番号から会社名を検索できるのですが、
個人事業主の場合、本名が表示されます。
これは匿名性の高い業種、とくにライターや芸能人などで問題になります。

もう一つは、インボイス登録をする=消費税を納めるということなので、
単純にいままで益税として利益になっていた10%分が無くなってしまいます。
まあこれはインボイス制度が始まればインボイス非登録者は
消費税を請求することはできなくなるので、登録する云々の
問題では無いのかもしれませんが。
いままで税込み表示だった場合、今後はその金額から10%を引いた額と
する必要があります。
平たく言うと売上が10%ダウンするということですね。

一応インボイス制度には段階的な経過措置があって、
・2023/10~2026/9(3年間)は非インボイス請求書であっても
 消費税額の80%は支払ったと認める。
・2026/10~2029/9(3年間)は非インボイス請求書であっても
 消費税額の50%は支払ったと認める。

とのことで、2029年10月からは経過措置がなくなり、
完全なインボイス制度のもと消費税の納付が行われます。

いままで消費税の納付義務があった会社については
”インボイス番号を登録し請求書に記載する”というどちらかというと
事務的な負荷ですが、
消費税の納付が免除されていた年間売上1,000万円以下の会社/個人事業主は
利益に直結する話なので、いろいろ揉めていますね。

また、仕事を発注する側にしても受注側がインボイスに登録しているかどうかは
重要な要素になります。
外注に対して「インボイス登録してインボイス番号おしえてね~」
で終わればいいですが、いままで消費税の納付が免除されていた個人事業主
などにとってはそう簡単にいかないでしょう。
非インボイスの外注からの請求書に消費税が記載されていれば
是正を要求する必要がありますし、そもそもの請求金額に対する
交渉の余地も出てくるでしょう。
「非インボイス業者とは取引しない」という対応になる可能性もあります。

まだまだ議論の余地が多いインボイス制度。
電子帳簿保存法のように、直前で期間など変わる可能性はないとはいえませんが、
IEサポート終了?!聞いてねえぞ!みたにならないよう
ならないよう、いまからしっかり準備していきましょう。